同時代を生きて。
古本市で見つけました。
1933年、まさに「時の人」だった荒木貞夫陸相。
著作ではなく演説からおこした記録を、
おそらく青少年向けにルビつきで印刷。
国家の命運をになう若きひとびとを国威掲揚に導かんとする熱き思い
が伝わってきます。
質実剛健にして直情径行、曲がったことが大嫌いな
頑固親父(いまや絶滅危惧種?)の熱血
と愛する皇国によせる清らかな乙女のごとき純情
をあわせもつ、魅力的な人物像。
いっぽう精神論に傾注するあまり20世紀以降
戦争の力学が科学と経済力にこそ裏付けられるようになった
時代の変化をよみきれず、敗戦と国土の荒廃をまねいた
限界をも感じざるをえません。
やや気になるのは、
荒木陸相の考え方と
21世紀現代の田母神閣下のそれが似通っているのではないか
と思えるところ。
国を愛する心も視野広く、柔軟であれと願います。
対して、高知の閨秀詩人・槇村浩。
1980年刊です。
幼少から英才の誉れ高く、早熟な文才を発揮した天才詩人は
バイロンを愛読し、自由を愛するがゆえに
当時の非合法活動にのみこまれてゆきました。
わずか26年の生を燃やし尽くしたその作品は
清冽な叙情とみずみずしい苦悩につらぬかれて
いたましい感動をよびおこします。
こちらで代表作がよめます。
郷里の高知を拠点に活動していた、
半島に旅行経験もない19才の若者が
こんな壮烈な叙事詩をものするとは。
(うちの娘もちょうど同年ですが、さかだちしてもこんな傑作かけない、
あたりまえか・・・。)
この、御二方。
かたや権力の中枢であり、
かたや無政府主義の闘士。
水と油以上にかけはなれた存在で
とうぜんお互いにもっとも大嫌いな不倶戴天の敵同士なのでしょうが
同時代に活躍し、
ともに閉塞した時代をきりひらこうとして
それぞれの立場から真摯に生き抜いたふたり
であることは確かですね。
とてもせつない気持ちになります
(後世の人間の幸運・・・)。
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