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2014年2月23日 (日)

『大ちゃんの門出』。

大ちゃんの門出・赤木由子・新日本出版社.jpg

かるい知的障がいのある『大ちゃん』は中学3年。

東京(浅草かいわい?)の下町にある公立中学のとくべつ学級をまもなく卒業して
社会にでてゆかなければなりません。

とくべつ学級の先生たちの奔走で
クリーニングの工場や
個人クリーニング店で
職場実習をがんばるのですがうまくゆかず失敗ばかり、

長く体調がよくなかったお母さんが
肺炎をこじらせてあっけなく亡くなり、
歳の離れたお姉さん
とお義兄さん
とくらすことになります。

『大ちゃん』の既往症は、
くわしくかかれていませんが
(うまれたときあたまにこぶがあり、足が湾曲して
よくひきつけを起こしたのを、
亡くなったお父さんとお母さんが根気よくマッサージしたかいがあったのか
あるけるようになった、とさらりと記述されていることから
軽い脳性まひの後遺症?
わかるかたにはすぐわかるのでしょう)

ややがんこで意地っ張りだけど
すなおで仲間を思いやる
あたたかい心の持ち主である『大ちゃん』、

もとは他人のお義兄さん
に反発しながらも、
お義兄さんのきびしさある優しさや熱い心
(足がよわい『大ちゃん』が自転車に乗れるようにと特訓につきあい、しごきまくる)
を見直したり、

決してやさしくない社会とのかかわり
やたびたびの失敗にもめげず
周囲の人たちに支えられながら
ゆっくり成長してゆくようすがみずみずしく描かれています。

親身になってくれるとくべつ学級の先生がた、
親学級(通常の3年生クラス)の友達、
亡きお父さんの先輩で、ちいさいころから『大ちゃん』
をかわいがってくれている植木職人のおじいさん。

現実に
『大ちゃん』の立場の子が
これだけまわりの『人』に恵まれること
は、悲しいけれどなかなか難しいのではないでしょうか。

より心のあたたかい世の中であってほしい
という作者の願いがこめられているようです。

植木職人のおじいさんは、
『大ちゃん』よりひとつ年上の孫娘『アイちゃん』
とふたりぐらし、
やはりかるい知的障がいがある『アイちゃん』
は家にひきこもりがち
で、おじいさんは自分がいなくなったあとの『アイちゃん』
のゆくすえを心配しています。

とくべつ学級の先生の声かけで、障がい者が集団で働き学びながら生活する共同作業所
を見学した『大ちゃん』たち、
『アイちゃん』は勇気をだして、作業所に入所する決意をしますが・・・

作業所の生活が順調にスタートしてみんながほっとしたやさき、
『アイちゃん』がいなくなったという大事件が・・・

発端は、『アイちゃん』たちのグループがゴルフ場の剪定をしているとき、
株主の有力者がとおりかかり、
『ゴルフ場に相応しくないみぐるしい集団をいれないでほしい』
と不興をかって作業所に申し入れがあり、
『アイちゃん』がショックをうけたから・・・でした。

お正月も毎日『アイちゃん』をさがしつづける『大ちゃん』、
繁華街であやしげな若者に声をかけられて
空き巣・オフィス荒らしのパシリ
につかわれそうになりますが間一髪、通りがかった警官のおかげで難をのがれます。

ようやくみつかった『アイちゃん』、
スナックで住み込みでウエイトレスさせられていました。

なにもきかずどこのだれともわからない女の子を保護した
スナックの女将さんに、(なんていいひとだろう)
と感動しかける『大ちゃん』でしたが・・・

『大ちゃん』のお義兄さんは、
警察や親元に連絡もせず
未成年の女の子を二週間もつかっていた
女将さんを激しく糾弾、

女将さんもヒステリックに応酬、

(こいつ、いがいとかしこくて、こわいやつだぞ)
とお義兄さんを見直す『大ちゃん』、

とりあえず、『アイちゃん』をとりもどした
先生やおじいさんふくめて
おとなたちがお礼をいって店をあとにする、
はじめ愛想がよかった女将さんは見送りもしない。

児童文学なのであまり深刻ではないですが、

甘いことをいったり優しくして近寄ってくる人が
必ずしも良い人とはかぎらない
(よわい立場の人をくいものにする悪い人が世の中にはすくなくない)、

ほんとうに自分のことを考えてくれる、
信頼できる人こそ、そばにいてほしい。
作者の思いと願いがつよく感じられます。

卒業を目前に、
『大ちゃん』の就労の問題はまだなにも解決していませんが、

『アイちゃん』のおじいさんの口利きで
おじいさんの昔の弟子の造園業者
(亡きお父さんのかつての同僚でなかよし)
に入門することになりそうで、幸運が開けそうなところで終わっています。

おとなになった『大ちゃん』はどうなるのか、

りっぱな植え木職人として自立してゆけるのか、

『アイちゃん』と同じく
作業所で働き学び共同生活しながら社会とかかわってゆくのか、

前途は洋々としてまだなにもわからないけれど、
とりあえず白梅が咲き、うぐいすが鳴き始める
卒業まじかな希望の春。

・・・1981年刊なので、もう30年以上前の作品ですが

(私の中学時代、図書室に新刊で入荷されていたのをみたことあり、)

障がいのあるお子さんやその家庭をめぐる環境が
当時と比べて現代はどれほど変化しているのか、未知数にも思えます。

作者の赤木由子さんはおもに1960年代後半から80年代
の昭和時代後期に活躍された作家で、
当時の児童文学の水準の高さがうかがえます。

盲学校の児童をあつかった『美しいぼくらの手』も読んでみたいです
(・・・が、地元図書館には在庫がありません)。



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