子供はいつも。
今回の古書即売会の収穫。
大正2(1913)年2月号・3月号。
そっくりな表紙で、入稿ミス!?
と一瞬かんぐり(笑)ますが、版色がびみょうに異なっています。
明治末期から大正初めにかけて、
少年雑誌の大御所というべき存在が博文館の『少年世界』、
つづいて『少年』、金港堂の『少年界』、ややおくれて実業之日本社『日本少年』。
そして大正期は北原白秋や野口雨情が
児童文学界に新風をふきこみ
『赤い鳥』『金の船』から
詩も画も新しい才能がキラ星のごとく活躍します。
重患の噂ある露国東宮殿下(目次より)
すなわち
ロシア皇太子アレクセイ殿下。
このとき御年満8歳。
その薄幸な運命を思えばやるせない気持ちになります。
一コマ漫画に登場するのは、マーク・トウェイン若き日のエピソード。
なんとなくハイカラなのは、流行の和洋折衷の気風のせいでしょうか。
ユーモラスな笑い話。
古典落語にも通じるような、思わず口の端がほころび
どこかなつかしい小咄、
この系統は昭和戦前戦中の『少年倶楽部』や『主婦之友』まで
人気おとろえなかったようです。
われらが(笑)不世出の児童向け雑誌
大日本雄弁会講談社が『少年倶楽部』を創刊するのは
翌大正3(1914)年。
さあ・・・もう、すぐ。わくわく。
ところで蛇足ですが・・・
大正9(1920)年『世界少年』7月号の読者投稿欄より。
一部抜粋、
剽窃について
・五月号剽窃に対して如何にすればよきかとの御問に左の通り愚見申し述べます。
一、剽窃または暗号者は今後投書を禁じること
一、投書をなすも没書のこと
一、愛読者の資格を失うこと(HI)
・水野葉舟先生・・・五月号の作文欄を読んで剽窃が実際にあると聞いていやな気持になりました。しかし私も何時の本だか明らかではありませんが焼き直しを見た事でありました、
私は他雑誌より本誌の作文欄がほんとの正直な文の集まりと信じております。
また本誌に投書する人々に不正な人は居ないと思います。歌壇や句壇にはちょいちょい不正なの
を見受ける事がありますが・・・もしあるとすればわかり次第発表するが一番だと思います。(東京K)
・葉舟先生、前号俳句入賞、青森※※君のは日本少年四月に入賞したのを又世界少年に投書したのです。今度からそんな人があったら、すぐ証拠物件を添えて通知の方に書物をあるいは物品を呈するとしては如何です、私は病床でこれを書きました。乱筆は御免ください。(大分M)
・我が神聖なる世界少年文壇に於いて焼き直し又は剽窃等のいまわしい語を耳にして私は失望するをえませんでした。今後そのような者が現れたら・・・・
遠慮なく厳重な処置をとってください。即ちその者に対して賞品の発送を停止する勿論は今後一切投書を拒絶しては如何ですか私の思うところを腹蔵なく。(福島H)
剽窃
つまり盗作、もしくはパクリ。
・・・昔も、今も、たいして変わりませんね。
ただ、同じ作品を別紙に投稿するというのは・・・
雑誌Aで不採用でも雑誌Bに掲載されることはありうるので、
その場合は責められないのでは
と思うけど、この事例はいったん入賞した作品をまた別の雑誌に
投稿しているとのことなので、これはNGかな。
しかし時代が代わり人代わっても、
編集や企画は刻々進化するけれども
いつの時代も読者をよろこばせたのしませようとする編集部や執筆者の奮闘、
いつも新刊をたのしみにする読者の気持ちはかわらない。
そしていつの時代も、だれにとっても
子供の存在は未来への明るい希望であることは、唯一絶対の真理
でございます。
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