戦後のホームソーイング・リメイク。
なぜか表紙はあでやかなチャイナドレスでほほえむ美女ですが、
内容はなかなかシビア。
第二次大戦後すぐの、もののない時代。
たべるものも、着るものもなく、国民ぜんたいが貧窮のどん底にあえいでいたころ。
いっぽう、やけのこった和服をといて活動しやすい洋服につくりかえるニーズ
があったことから、雨後の筍のように洋裁ブームが起こり、
厳しい生活のなかでも平和がよみがえったよろこびに、
女性たちがせいいっぱいの工夫でおしゃれを謳歌していた雰囲気が伝わってきます。
毛布をコートに。
は、なんとなくわかるのですが、左下のあざやかなグリーンのツーピース。
な、なんとビリヤードの台のグリーンの敷布が材料!?
こんなことができるんだと眼からうろこの思いもよらない着想。
左下のメンズジャンパーは旧制高校のマントから。
1949年は学制改革の年で、同時期に
作家の北杜夫先生がいわゆる最期の旧制高校生のおひとりだった。
木原敏江先生の少女漫画『磨利と新吾』のような
学帽に学ランの上からマント、げたばきの
バンカラ・スタイルがみられた最後の時代だったでしょうか。
ともかく、旧制高校生のマントも
和服用コートの『とんび』も
布がたっぷりして、ほかの服につくりかえるには重宝されたことでしょう。
別珍のカーテンからコート、
映画『風と共に去りぬ』ではヴィヴィアン・リー扮する
スカーレット・オハラが
南北戦争直後の窮乏期に、お屋敷の古いカーテンを
目の覚めるようなドレスにして装うシーンがありましたね。
そしてつらつらみていると、
和服から洋服に仕立てるのは当時の人々が皆ふつうになさっていたこと、
新しい布が手に入らないこともありますが、なにより
ほどくと全部直線で一枚の四角い布にもどる着物はべんりだったのでしょう。
ぎゃくに洋服(生地でなく)から着物に仕立てる
のは、むずかしそうですね。
時代は代わり、
現在は古い着物をほどいて洋服やバッグ、パッチワーク等
つくりかえるのはむしろぜいたくな趣味になった。
とはいえグローバルには、おなじ世界でも
ものがなくて困っている地域は少なくないし、
不要なものを利用してつくりかえる「ゆとり」があるのは
とても恵まれたしあわせなことだと実感せずにいられません。
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