『海辺の彼女たち』
コロナで緊急事態宣言下の大阪ですが、
ひさしぶりに映画をみてきました。
技能実習生で日本に来た3人の若いベトナム人女性
を描く
『海辺の彼女たち』。
うーん。
いろいろと考えさせられました。
日本で働けばお金が稼げる
(物価の安い東南アジアでは日本の収入は5倍ほどの価値になる)、
貧しさからぬけだして
家族に楽をさせてあげたい、
その一心で来日する若者たち。
しかし過酷な現実に塞がれてゆく日常。
映画で描かれる世界は、
家の前借金で縛られ年季奉公させられている戦前の悲惨な若年者労働のような、
さらにつらい状況。
あまりに酷い技能実習先のブラック企業から
3か月で逃げ出し、ベトナム人ブローカー
(弱い立場の若い同胞を搾取している存在ではあるものの
飴と鞭をつかいわけ人心掌握にたけた、いわば女衒のような役回り)
を頼り
たどり着いたのは最果ての港(青森の漁港?)。
雪のつもるなか、無人倉庫の一角でストーブを焚き
寝泊まりする。
毎日が港湾労働(水産加工会社の違法下働き?)、
パスポートも在留カードも
もとの実習先においたまま逃げてきたので
発覚すれば不法就労で強制送還、
もはや行き着く果ては強制送還しかないけれど、
そうなるまではがんばって稼いで郷里に仕送りしたい。
なんの希望もないやるせないなかでも、
『妹に自転車を買ってやりたい』
『きょうだいの学費をだしてあげたい』
『韓国の歌手みたいなかっこいい人と結婚する💗』
とささやかな夢を語り合う。
(・・・ちなみに彼女たちは日本にいるけれども
日本人との交友関係は皆無、接する機会は職場・交通機関や病院の窓口等
のみ。ふつうの日本人と付き合う余裕のない厳しすぎる境遇。)
何とか滑り出したかにみえる新生活だったが、
3人のうちの一人、フォンがある日体調をくずし・・・
彼女には思い当たるふしがあった。
ベトナムを発ってから3か月以上、生理が来ていない。
身分証明を持たない
寄る辺なき身の上のため、
体調不良でも病院にかかれない、
ましてや入院して中絶手術などできない。
密売人にボラれながら
(今月の郷里への送金はできない)
なんとか偽造パスポートと偽造在留カードを手に入れるが・・・
いつアシがついて
とばっちりで
ばれて強制送還されるかもわからないコンディション
に、仲間ふたりの態度も変質してゆく・・・
最後まで救いなく
ラストは唐突に来る感じ(うまい演出)
で、
暗澹とした気分になりました。
映画のあと、リモートで
監督とプロデューサーの舞台挨拶が行われました。
左がプロデューサー、右が監督。
思ったよりずっと若いかたたちなので驚きました(まだ30そこそこ?)。
逆に若いからこそ
シビアな境遇もストレートに表現できるのかもしれない、
(質問時間に、観客のかたから
「あの3人の女性たちはプロの俳優さんですか?」
「ドキュメンタリーにしかみえない」
と声があがっていました。)
プロデューサーのかたは
「母に、『こんなつらい、悲しいだけの話だれがみるの?』
といわれた」
とおっしゃっていましたが、
私はお母さまに近い年代だと思いますが、さもありなんとうなずかされました。
お二方にはいっそうのご活躍を期待します。
本作は
いずれネット配信されるかも、
観て楽しい作品とはいえませんが一見の価値はあり。
現代日本のダークサイド。
弱い立場の女性のかなしみが浮き上がる作品ですが
のみならず、能動的な生きざま
を強調する映画も撮ってほしいです
(農家から生きた家畜をぬすみだす犯人グループとか・・・無理か)。
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