曽野綾子さん。
作家の曽野綾子さんがおなくなりになりました。
戦後日本の文壇を代表するおひとりでもあられ、
時代のオピニオンリーダーとして長きにわたり活躍された曽野さん。
ついにこの日が来たかと感無量。
カトリック教団の社会奉仕活動を支援する目的で
世界各地のいわゆる貧困地域・紛争地域を回り
日本国内の欺瞞的な性善説を看破した、有言実行の才女。
手前味噌でおはずかしいですが、
子供のころ(中学3年から高校のはじめぐらい)に
作品を読みふけりました。
NHKで連続ドラマ化された『太郎物語』、
戦後のベストセラーになったエッセイ『誰のために愛するか』
あとは短編集と、マリリン・モンローの生涯に着想えた長編『砂糖菓子のこわれる時』
あたりまで。
子供だったし大した読者ではありませんでしたが
若き日の芥川賞候補作となった『遠来の客たち』は面白かったです。
戦後間もないころ、
米軍に接収された箱根のホテルで
従業員の少女の眼を通してくりひろげられるひと夏の人間模様。
進駐軍とその家族であるアメリカ人たちに対して
卑屈でもなく媚びるでもなく、
『遠来の客』にナチュラルに接する少女の姿勢は
まさしく新時代の清新な気風として、戦後の文壇にも強烈な印象だったことでしょう。
曽野さんの生涯通して、
カトリックの信仰をバックボーンに、
誰もが生きるうえでさけられない苦しみやなやみに揉まれながらも
どこか達観した「明るさ」
は、この『遠来の客たち』当時から晩年まで不変だったのでは
と思います。
夫君の三浦朱門先生を見送ってから8年、
いまは天界で再会よろこんでおられるでしょうか。
いわゆる第三の新人たち、
遠藤周作先生や北杜夫先生、
同世代でともに才女と喝采あびた有吉佐和子さん、
気鋭の評論家であられた上坂冬子さん、
世界中で奉仕活動に殉じたシスターたち、
十代のころからの盟友だった鶴羽伸子さん。
名だたるみなさまに迎えられて祝福されていらっしゃるかも。
そして下界は、またさみしくなりますね。
生涯書き続けた文学乙女の、魂安からん事
を心よりお祈りします。
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